年金改正をわかりやすく解説 ~2025年以降の関連法案のポイント~

目次

年金改正、いつから?

今後の年金改正が話題になっていますね。
厚生労働省が2025年1月24日召集の通常国会へ提出を目指す年金制度改革における関連法案のポイントを取り上げてみます。

まず、まとめ表は以下の通りです。

基礎年金(年金給付額)UP

概要

基礎年金の底上げについては、実施判断を2029年以降に先送りにしたという内容です。
基礎年金とは、国民年金のことを指します。
イメージしやすいのが自営業者(第1号被保険者)ですが、その方が40年間ずっと国民年金保険料を払った場合の年金額は、「780,900円×改定率」です。
具体的には、月額約6万5千円という年金額です。

議論の前提

この議論の前提としては、今のままでは基礎年金の水準は今後大きく下がるという見通しがあります。すなわち、政府は2057年度にかけて現在の給付水準よりも実質3割目減りすると見積もっています。大まかなイメージとしては、6万5千円の3割減ですので、約4万6千円ということになります。

内閣官房/次期年金制度改正について
【10頁参照】https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/zensedai_hosyo/dai20/01_siryou1.pdf

生活保護との比較

余談ですが参考までに、東京23区の高齢単身世帯(65歳)の生活扶助基準額は、月額76,880円です。つまり、40年間第1号被保険者として年金保険料を支払い続けた場合の年金額が約6万5千円(月額)であるのに対して、生活保護の支給額が約7万6千円(月額)となっている現状があります。この乖離は、基礎年金底上げ議論の一つの指摘事項になっています。

【参考】令和5年10月からの生活保護基準の改定について
https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/PC/kenkou/kenkou-seikatsukomaru/20230913114855.html

働く高齢者の年金カットの緩和

在職老齢年金制度

主に65歳以上の人が一定の収入を得ると厚生年金が減らされる制度があります。
これを、在職老齢年金といいます。
ネーミング的に「何か別の年金がもらえるの?」と勘違いしそうです。
しかし、実態は年金カットの仕組みです。

見直しの趣旨

この年金カットの対象となる「一定の収入」について、現在の月額50万円から62万円に引き上げる方向で調整しているというのが、本件トピックです。
改正の趣旨としては、「働く高齢者の勤労意欲を損なわないように!」という点にあります。

在職老齢年金制度の詳細は、別途コラムで説明したいと思います。
いったん下記をご参照ください。

日本年金機構/在職老齢年金の計算方法
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/zaishoku/20150401-01.html

厚生年金保険料の等級(増加)

厚生年金保険料の計算においては、従業員の月々の給料を8万8千円~65万円の32等級(健康保険は5万8千円~139万円の50等級)に分けて標準報酬月額というものを算出します。これを「保険料額表」の区分にあてはめて毎月給与から天引きする社会保険料が決まります。

2027年9月を目途に、この厚生年金保険料における65万円の上限等級を75万円に上げるという話です。

◆ 厚生年金保険料:8万8千円~65万円の32等級

日本年金機構/保険料額表
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/ryogaku/ryogakuhyo/20200825.html

106万の壁の企業規模要件(撤廃へ)

「106万円の壁」は、パートタイムやアルバイトとして働く方々が、年収約106万円を超えると、会社規模やその他の条件との合わせ技で、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入義務が生じるという話です。

現在、勤務先の従業員数が51人以上と定めている企業規模要件を、2029年10月に廃止するわけですが、保険料を労使折半で負担する企業側に配慮する段階的措置として、2027年10月に「51人以上」から「21人以上」に緩和したうえで廃止します。

「106万円の壁」の詳細は、以下のコラムをご参照頂けたら幸いです。

【コラム】106万円の壁~「年収の壁」議論とM&Aの注意点~
https://sr-try-partners.com/earnings-limit-106m-and-business-ma/

この記事を書いた人

社会保険労務士 佐藤 裕太

TRY-Partners社会保険労務士事務所 代表

経営者のホットライン・丁寧な対応で徹底サポート
~経営者・人事労務担当者向けの実務情報を毎週配信中~

全国社会保険労務士会連合会 登録番号 13240356号
東京都社会保険労務士会 会員番号 1331899号
■ 東京都社会保険労務士会千代田支部 開業部会 委員

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